日本中性子捕捉療法学会より 第1号「技術業績賞」を受賞    

 日本中性子捕捉療法学会より
           第1号「技術業績賞」を貰って          平成25年9月8日
                                     上席師範 辛嶋岳杲

 人間の寿命が延びている中で、特に日本人の寿命は延びている。しかし、短命で亡くなる人も又多い。その中で、ガンで亡くなる人はやはり年々増え続けている。
ガンの治療法にも様々な方法があり、新しい治療法も増えている。医療技術は発展し、色々な治療法でガン細胞だけを死滅させる方法が開発されようとしていて、もう既に500例にも及ぶ治験が行われている治療法がある。それが「中性子捕捉治療法」である。
 この治療法の一つは「グリオブラストーマ(悪性脳腫瘍の一種)」の治療研究で、1968年から日本で行われてきた。続いて1985年から神戸大学の三島豊教授の研究班による「皮膚の悪性黒色腫瘍メラノーマ」の治療研究が始まり、私も研究員の一員として動物実験、人体模型のファントム実験、臨床実験を行い、三島班で10B-BPAと言うヨウ素薬剤を開発して、正常細胞には障害を与えずにガン細胞だけを殺す治療法を確立した。
 細胞選択的治療法については、武蔵工大の実験用原子炉の中性子を使って臨床研究が行われ良い成績を出したが、途中で原子炉の水漏れ事故が起った為、京都大学の実験炉を使っての治験研究が行われて来た。
 この治療法が今まで一般化されずにいたのは、実験用の原子炉から出る中性子を使っていた為で、病院に原子炉を作ることは出来ないし又、原子炉を医療機器と見なすことは出来ない。其の為に一般に使う事が出来ない状態であった。しかし漸く世界で初めて京都大学原子炉実験所の中の加速器で、治療に使い得る中性子を作り出す装置を開発して、現在厚生労働省認可の為の治験が行われている。間もなく新しい治療法が開始される。
 この度この中性子捕捉療法の学会「第10回中性子捕捉療法学会学術大会」が岡山大学で開催され、多くの大学並びに研究者が一堂に集い、臨床研究、物理工学研究、薬学研究についての研究発表が盛大に行われた。
 この学会の席上、私は長年の研究と人材育成と業績を積み上げてきた事に対して名誉ある“第一号の技術業績賞”を貰った。
 これから間も無く治験も終り、臨床ガン治療になっていくであろうが、大きな問題が横たわっている。多額の金さえ出せば大きな装置でも施設でも買うことは出来るが、出来ないのが人材育成である。物理工学が解り、生物学、医学、薬学に精通した広い範囲の知識を持つ人材を準備しなければ、この治療法は成功しない。少なくとも一施設に3人は必要であろう。全国に20施設作るとしても60人は必要になる。
 現在、京都大学原子炉実験所で携わっている医学物理士は3人しか居ない。まだまだやるべき多くの仕事があり、これからも努力しなければと思っている。